リーダーになってから、なぜか自分の仕事だけが終わらない。
プレイヤーとしては順調だったはずなのに、立場が変わった途端、常に何かに追われている感覚が続いていました。
「自分のやり方が悪いのか」「能力が足りないのか」――そう考えて、さらに手を動かしてしまう。
でも今振り返ると、問題は努力量でもスキルでもありませんでした。
リーダーという役割に対する“考え方”が、プレイヤーのままだっただけだったのです。
この記事では、リーダーになってから「自分の仕事が終わらない」状態が続いた理由を、実体験をもとに整理しながら、そこから抜け出すために必要だった視点の切り替えについてお話しします。
リーダーになる前は、仕事が回っていた
リーダーになる前、仕事は今よりもずっとシンプルでした。
やるべきことは明確で、優先順位も自分でコントロールできていた。
タスクを一つずつ片付けていけば、遅くはなっても「今日はここまでやった」と区切りをつけることができていました。
プレイヤーとして求められていたのは、自分の成果を出すことでした。
担当範囲もはっきりしていて、責任の境界線も明確です。
困ったことがあれば上に相談し、判断は自分の外にある。
だからこそ、仕事が増えても「忙しいな」で済んでいたのだと思います。
この頃は、仕事が終わらない感覚はほとんどありませんでした。
多少の残業はあっても、原因は自分のタスク量だと分かっている。
終わりが見えているから、精神的にもそこまで消耗しなかったのです。
今振り返ると、この「仕事が回っている感覚」は、
・自分の役割が明確だったこと
・責任の範囲が限定されていたこと
・判断を背負いすぎなくてよかったこと
この3つに支えられていました。
だから当時は、「リーダーになれば仕事の幅が広がるだけ」くらいに考えていました。
まさか、立場が変わることで仕事の性質そのものが変わるとは、正直想像していなかったのです。
リーダーになってから「常に終わらない感覚」に変わった
リーダーになってから、仕事の量そのものが急激に増えたわけではありません。
それなのに、なぜか「終わった」と感じられる瞬間がなくなりました。
一日の終わりに残るのは達成感ではなく、やり残しの感覚だけ。
何かを片付けても、すぐに次の課題が浮かび上がってくるようになったのです。
一番大きく変わったのは、自分の作業時間が安定しなくなったことでした。
会議、相談、確認、調整。
自分が集中して作業しようとすると、誰かから声をかけられる。
そのたびに頭を切り替え、別の問題を考える必要が出てくる。
結果として、まとまった時間が取れなくなっていきました。
さらに厄介だったのは、仕事の「終わり」が見えなくなったことです。
プレイヤー時代は、タスクを完了すれば一区切りがつきました。
しかしリーダーになると、
「本当にこれで大丈夫か」
「誰かが詰まっていないか」
「次に問題が起きそうなところはないか」
と、確認すべきことが次々と頭に浮かんできます。
仕事が終わらないというより、終わらせてはいけないような感覚に近かったのかもしれません。
自分が手を止めた瞬間に、何かが滞るのではないか。
見落としがあれば、それは自分の責任になる。
そう思うほど、気持ちは常に仕事から離れられなくなっていました。
その結果、実際の作業時間以上に、思考のリソースが奪われていきました。
家に帰っても頭の中では仕事の続きを考えている。
休んでいるはずなのに、どこか疲れが抜けない。
「忙しい」というより、「ずっと仕事を抱えている」状態だったのだと思います。
この時点では、まだ気づいていませんでした。
この終わらない感覚が、自分の能力や努力不足ではなく、
役割が変わったことによる構造的な問題だったということに。
「自分の仕事が終わらない」最大の原因は何だったのか
結論から言うと、「自分の仕事が終わらない」最大の原因は、
プレイヤーの延長でリーダーをやっていたことでした。
リーダーになったからといって、急に仕事への向き合い方が変わるわけではありません。
これまで評価されてきたのは、「自分で動いて成果を出す力」でした。
だから無意識のうちに、リーダーになっても同じやり方を続けてしまっていたのだと思います。
誰かが詰まっていれば、自分が手を出す。
判断に迷っていそうなら、自分が決める。
遅れそうなタスクがあれば、自分で巻き取る。
そうした行動は、決して間違っているわけではありません。
むしろ「責任感の強いリーダー」ほど、自然にやってしまうことです。
ただ、その積み重ねが、結果的に自分の仕事を終わらせなくしていました。
自分が動けば動くほど、チーム全体の仕事が自分に集まってくる。
一時的には回っているように見えても、構造としてはどんどん歪んでいきます。
特に大きかったのは、
「自分がやったほうが早い」
「自分が見ていないと不安」
という感覚でした。
この考え方のままだと、仕事を手放すことができません。
任せたとしても、結局は途中で確認し、修正し、最終的には自分が責任を背負う。
結果として、自分のタスクも、他人のタスクも、両方を抱える状態になっていました。
今振り返ると、問題は仕事量ではありませんでした。
仕事の「範囲」と「役割」を切り替えられていなかったこと。
プレイヤーとしての成功体験が、その切り替えを難しくしていたのだと思います。
リーダーの仕事は、本来「自分が進める仕事」ではありません。
それでも当時の私は、
「自分が一番忙しい=ちゃんとリーダーをやっている」
と、どこかで勘違いしていました。
だからこそ、仕事は終わらなかった。
終わらないのではなく、終わらせられない状態を自分で作っていた。
それが、この時点でたどり着いた答えでした。
リーダーの仕事は「タスク」ではなく「状態管理」だった
自分の仕事が終わらない原因に気づいてから、
「では、リーダーの仕事とは何なのか?」を改めて考えるようになりました。
そのときに行き着いた答えが、
**リーダーの仕事は“タスクをこなすこと”ではなく、“状態を整えること”**だという考え方でした。
プレイヤー時代の仕事は、基本的にタスクベースです。
何を、いつまでに、どうやって終わらせるか。
自分の作業を前に進めることが、そのまま成果につながっていました。
一方で、リーダーの仕事はそう単純ではありません。
見るべきなのは、自分のタスクではなく、チーム全体の状態です。
誰かが詰まっていないか。
判断に迷って止まっていないか。
情報が足りずに遠回りしていないか。
無理をして抱え込みすぎていないか。
こうした「進んでいる/止まっている」「余裕がある/ない」といった状態を把握し、
必要なところにだけ、最小限の介入をする。
それが、本来リーダーに求められていた役割でした。
この視点に立つと、これまでの自分の動きが見えてきました。
私は「状態を整える前に、自分で動いてしまう」ことが多かった。
だから一時的には問題が解消されても、チームの状態そのものは変わらない。
結果として、同じような詰まりや相談が何度も繰り返されていたのです。
さらに厄介だったのは、
リーダーが動けば動くほど、チームが止まりやすくなるという構造でした。
判断を自分が引き取れば、周りは待つようになる。
手を出せば出すほど、周囲は「任せる」ようになる。
その結果、自分だけが忙しくなり、仕事が終わらない状態が固定化していきました。
状態管理の仕事は、目に見えにくく、成果も分かりづらいものです。
だからこそ、「何もしていないようで不安になる」瞬間もあります。
けれど実際には、
・余計な混乱を起こさない
・判断を先出しする
・詰まりを早めにほどく
こうした見えない仕事こそが、チーム全体を前に進めていました。
この考え方に切り替えてから、
「自分が一番忙しい状態」は、必ずしも良い状態ではないと分かるようになりました。
むしろ、チームが静かに回っているときこそ、
リーダーとしての仕事が機能している状態なのだと思います。
それでも当時は気づけなかった理由
今なら、リーダーの仕事は「タスク」ではなく「状態管理」だと理解できます。
それでも当時の自分が、そのことに気づけなかったのには、はっきりとした理由がありました。
一つ目は、これまで評価されてきたものが、
「自分が動いて成果を出す力」だったという事実です。
プレイヤーとして結果を出し続けてきた人ほど、
「困ったら自分が動く」「自分が何とかする」という行動が、無意識の正解になっています。
その成功体験が、役割の切り替えを難しくしていました。
二つ目は、リーダーという立場に対する責任感でした。
チームの成果やトラブルが、そのまま自分の評価につながる。
そう思うほど、見過ごすことや任せることが怖くなります。
何か起きたときに「なぜ気づかなかったのか」と言われるくらいなら、
最初から自分が抱えたほうがいい。
そんな心理が、自然と働いていました。
三つ目は、忙しさが“頑張っている証拠”に見えてしまうことです。
自分が一番遅くまで残り、誰よりも多くの仕事をしている。
その状態を、どこかで「ちゃんとリーダーをやれている」と感じていた部分もありました。
仕事が終わらないこと自体を、問題だと認識できていなかったのです。
さらに言えば、周囲から止められることもほとんどありませんでした。
むしろ「助かります」「ありがとうございます」と感謝される場面のほうが多い。
その言葉が、自分のやり方を肯定しているように聞こえてしまう。
結果として、違和感はあっても、立ち止まるきっかけを持てませんでした。
こうした要素が重なり、
「忙しいのは当然」
「リーダーなんだから仕方ない」
と、自分に言い聞かせながら走り続けていたのだと思います。
今振り返ると、気づけなかったのは能力の問題ではありません。
むしろ、真面目に取り組んできたからこそ、
簡単には考え方を切り替えられなかった。
それだけの話だったのだと思います。
少しずつ変えた考え方と行動
考え方を切り替えようと決めたからといって、すぐに楽になったわけではありません。
長年染みついたやり方は、そう簡単には手放せませんでした。
それでも、意識するポイントを少しずつ変えていくことで、状況は確実に変わっていきました。
まず最初にやめたのは、すべてを把握しようとすることでした。
チームのあらゆる動きに目を配り、細かい部分まで理解していないと不安になる。
その状態が、結果的に自分の仕事を増やしていると気づいたからです。
「全体の方向性と詰まりそうなところだけを見る」
そう割り切ることで、頭の負荷が少し軽くなりました。
次に変えたのは、任せる基準です。
以前は「このレベルまで仕上がっていないと任せられない」と考えていました。
でもそれでは、結局最後まで自分が関わることになります。
そこで、「完成度」ではなく「方向性が合っているか」で判断するようにしました。
大枠が合っていれば、細部は任せる。
その分、軌道修正は早めに行う。
この意識の切り替えが、大きな分岐点でした。
また、「自分がやったほうが早い」と感じたときほど、
一呼吸おいて考えるようにしました。
今ここで手を出すことが、本当にチームのためになるのか。
それとも、短期的に楽になるだけなのか。
この問いを挟むだけで、行動は少しずつ変わっていきました。
さらに、自分の仕事量ではなく、
チームの滞留を見るように意識を向けました。
誰かが止まっている原因は何か。
判断が足りないのか、情報が足りないのか。
そこにだけ関わることで、無駄な介入を減らせるようになりました。
こうした変化を積み重ねるうちに、
自分の一日は「作業で埋まる日」から、「判断と調整が中心の日」へと変わっていきました。
仕事がゼロになるわけではありません。
ただ、「終わりが見えない感覚」は、確実に薄れていきました。
振り返ると、大きく変わったのはスキルではありません。
「自分がやる仕事」と「やらなくていい仕事」を切り分けられるようになったこと。
それが、少しずつ仕事を終わらせられるようになった一番の変化でした。
今、同じ状態で苦しんでいる人へ
もし今、
「リーダーになってから仕事が終わらない」
「常に何かに追われている感覚が抜けない」
そんな状態にいるとしたら、まず伝えたいことがあります。
それは、あなたの能力が足りないわけではないということです。
マネジメントが向いていないからでも、頑張りが足りないからでもありません。
むしろ、責任感が強く、真面目に向き合っている人ほど、同じ状況に陥りやすいのだと思います。
リーダーになった直後は、
「自分が動かなければ回らない」
「自分が見ていないと不安」
そう感じるのが自然です。
役割が切り替わったばかりの段階で、完璧に振る舞える人はいません。
仕事が終わらないのは、あなた一人の問題ではなく、
**役割が変わったことによる“ズレ”**が原因であることがほとんどです。
そのズレに気づき、少しずつ調整していけば、状況は必ず変えられます。
無理に理想のリーダー像を目指す必要はありません。
すぐに任せきれるようにならなくてもいい。
まずは、
「今、自分は何をやろうとしているのか」
「それは本当に自分がやるべき仕事なのか」
この問いを一つ挟むだけで十分です。
仕事が終わらない日々は、ずっと続くものではありません。
視点が変われば、関わり方も変わり、
いつの間にか「終わりが見える仕事」に戻っていきます。
焦らなくていい。
今の違和感は、リーダーとして次の段階に進むためのサインです。
あなたが感じているその苦しさは、決して無駄ではありません。
まとめ|リーダーの仕事は「減らす」ことで回り始める
リーダーになってから、自分の仕事が終わらなくなった。
その原因は、忙しさや能力不足ではありませんでした。
多くの場合、それは役割が変わったのに、仕事のやり方を変えられていなかっただけの話です。
プレイヤー時代は、仕事を増やすことで成果が出ていました。
自分が動き、手を動かし、前に進める。
その成功体験があるからこそ、リーダーになっても同じことを続けてしまう。
結果として、自分の仕事も、チームの仕事も、抱え込む状態になってしまいます。
でも、リーダーの仕事は「足す」ことではありません。
むしろ、減らすことから回り始めます。
自分がやらなくていい仕事を減らす。
判断を引き取らない。
手を出しすぎない。
その余白が、チームを動かし、自分の仕事を終わらせていきます。
何もしないことと、見ていることは違います。
動かないことと、任せていることも違います。
状態を整え、流れを止めない。
それは決して楽な仕事ではありませんが、確実にチームを前に進める仕事です。
もし今、
「自分が一番忙しい」
「常に何かを抱えている」
そんな状態にあるなら、一度立ち止まってみてください。
減らせる仕事が、どこかに必ずあるはずです。
リーダーの仕事は、すべてを抱えることではありません。
減らすことで、初めて回り始める。
それが、この記事を通して辿り着いた結論です。


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