20近い現場を渡り歩いてきた。
技術的に難しい案件もあったが、本当にしんどかったのは、たいてい人の問題だった。
ただ、誤解のないように書いておくと、働きにくい人が悪い人だったわけではない。多くの場合、悪意はない。ただ、仕事の進め方や価値観が自分と合わなかった。それだけだ。
そういう相手に対して、感情的になっても状況は変わらない。変えられるのは自分の関わり方だけだった。
この記事では、自分が「働きにくい」と感じたタイプと、そのとき実際にやっていた対処法を書く。
タイプ①:瑣末なことにこだわり、話が噛み合わない人
最も多く遭遇したのがこのタイプだ。
議論の目的から外れた細部にこだわる。全体の方針を決めたい場面で、特定のケースの例外処理の話が延々と続く。「それは後で決めればいい」と思うことに時間が使われる。
本人は手を抜いているわけではない。むしろ真面目で、細かい部分まで考えようとしている。ただ、今この場で決めるべきことと、後で決めればいいことの区別がついていない。
結果として、会議が長引く。決まるべきことが決まらない。他のメンバーの時間も消費される。
どう対処したか
別途、対面で補足説明をする
会議の場で軌道修正しようとすると、相手の面子を潰すことになる。それより、会議の前後に個別に話す方が効果があった。
「この会議では、まず全体の方針を決めたいと考えています」と、目的を事前に共有しておく。そうすると、相手も何を話すべきかを調整してくれることがある。
認識のズレをこまめに擦り合わせる
話が噛み合わない原因の多くは、前提の認識が違うことだった。自分が当然と思っている前提を、相手は共有していない。あるいはその逆。
だから、議論の途中で「今の理解では、こういう認識で合っていますか」と確認を挟む。手間はかかるが、最後まで進んでから認識違いが発覚するより、はるかに早い。
議論の階層を明示する
「今は方針レベルの話をしています。実装の詳細は次のフェーズで詰めましょう」と、何の話をしているかを言語化する。これだけで、話が戻りにくくなることがあった。
タイプ②:情報を共有しない人
もう一つが、必要な情報を出さない人だ。
意図的に隠しているケースもあれば、共有の必要性を認識していないケースもある。本人の中では完結しているので、周囲が知らないことに気づいていない。
これが起きると、作業の手戻りが発生する。「それ、先に言ってほしかった」という状況が繰り返される。プロジェクトの進行に直接影響するので、放置できない問題だ。
個別に「共有してください」と言っても、改善しないことが多かった。悪気がない分、指摘しても響かない。
どう対処したか
全体チャットで確認の連絡を入れる
個別のDMではなく、チーム全体が見えるチャンネルで聞く。
「この件、現状はどうなっていますか」と投げる。すると、その人が答えざるを得ない状況になる。同時に、他のメンバーも「その情報は自分も知らなかった」と気づく。
他のメンバーからも共有を促される状況を作る
全体の場で聞くことの効果は、ここにある。自分一人が催促すると、個人間の摩擦になる。でもチーム全体が「それは共有してほしい」と認識すれば、構造的に共有が促される。
一対一の問題を、チームの問題に変える。これが一番効いた方法だった。
定例の共有の場を作る
朝会でもいいし、週次の短い確認でもいい。情報を共有する場が定期的にあると、「言う機会がなかった」という言い訳が成立しなくなる。
仕組みで解決できることは、人に期待するより確実だ。
対処するときに気をつけていたこと
いくつか、意識していた原則がある。
相手を変えようとしない
性格や仕事の進め方を変えてもらおうとすると、必ず摩擦が起きる。そして、たいてい変わらない。
変えられるのは自分の関わり方だけだ。この前提に立つと、感情的なストレスがかなり減る。
感情ではなく仕組みで解決する
「なぜ共有してくれないのか」と不満を持っても何も変わらない。共有せざるを得ない仕組みを作る方が早い。
人の意識に期待する解決策は、持続しない。構造を変える方が確実だ。
相手を悪者にしない
全体チャットで確認するとき、責める調子にならないよう気をつけていた。「共有してください」ではなく「現状を教えてください」と聞く。
目的は情報を得ることであって、相手を正すことではない。ここを混同すると、関係が悪化して結局やりにくくなる。
どうしても合わなければ距離を取る
対処しても改善せず、消耗だけが続くなら、関わる頻度を減らすという判断もある。必要最低限のやり取りに絞る。
SESであれば、現場が変わればリセットされる。「この現場が終わるまで」と期限を意識すると、耐えやすくなる面もあった。
逆に、一緒に働きたいと思えた人
働きにくい人の話をしてきたので、逆も書いておく。
わからないことを素直に言える人
知ったかぶりをしない。「それは知らないので調べます」と言える。こういう人とは、情報のやり取りが正確になる。
技術力が高い人ほど、知らないと言いにくくなる傾向がある。それでも言える人は、結果的に周囲から信頼される。
前提を確認してから進める人
作業に入る前に「この認識で合っていますか」と聞いてくる。手戻りが圧倒的に減る。
これは能力というより習慣だと思う。意識すれば誰でもできる。
悪い情報を早く出す人
問題が起きたとき、小さいうちに言ってくれる人。これが本当にありがたい。
自分自身、報告を遅らせてプロジェクトを炎上させた経験がある。だからこそ、早く言ってくれる人の価値がわかる。
よくある疑問への回答
Q. 苦手な人に対して、直接指摘した方がいいですか?
関係性と内容による。業務に支障が出ているなら伝えるべきだが、伝え方には注意がいる。人格ではなく、具体的な事象について話す。「いつも共有してくれない」ではなく「この件の情報が共有されず、手戻りが発生しました」と事実ベースで伝える。
Q. 上司が苦手なタイプの場合はどうすればいいですか?
対処の難易度は上がるが、原則は同じだ。記録を残す、確認を文書で行う、関係者を増やすといった方法で、一対一の関係に依存しない形を作る。改善の見込みがないなら、異動や転職も選択肢になる。
Q. 自分が「働きにくい人」になっていないか不安です
その不安を持てている時点で、大きな問題にはなりにくいと思う。気になるなら、情報共有の頻度と、認識確認の習慣を見直してみるといい。この2つができていれば、たいていの現場でやっていける。
まとめ
働きにくいと感じたのは、瑣末なことにこだわる人と、情報を共有しない人だった。
どちらも悪意があるわけではない。だから、責めても変わらない。変えられるのは自分のコミュニケーションの取り方だけだった。
話が噛み合わない人には、個別に補足して認識を擦り合わせる。情報を出さない人には、全体の場で聞いて、チームとして共有が促される状況を作る。
感情ではなく仕組みで解決する。これが、20の現場を経てたどり着いた結論だ。


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