副業を会社に認めてもらえなかったエンジニアの話|禁止されていないのに承認されない現実

お金と働き方

就業規則に「副業禁止」とは書かれていない。それなのに、上司に申請したら承認されなかった。

知り合いのエンジニアに、実際にそういう経験をした人がいる。彼は家族を養うために副業をしようとしていた。本業の給料だけでは足りないという、切実な理由があった。それでも承認は下りなかった。

この記事では、その話を通じて「副業が認められないとき、エンジニアは何を考えるべきか」を整理する。結論から言うと、問題は副業そのものではなく、身を置いている環境と、副業の選び方にあった。


就業規則では禁止されていないのに、承認が下りなかった

彼の会社の就業規則には、副業を禁止する条文はなかった。一般的に、就業規則に「副業は許可制」と書かれている会社は多い。禁止ではなく、申請して会社が可否を判断する形だ。彼の会社もそのタイプだった。

だから彼は、ルールに沿って上司に相談した。やろうとしていたのは、知り合いから紹介された受託開発の案件。本業とは競合しない、土日中心の作業だ。

それでも、承認されなかった。

理由は明確に示されなかったらしい。「本業に支障が出る」「前例がない」といった、曖昧な話で終わったという。許可制というのは、裏を返せば「会社の裁量で断れる制度」でもある。制度上は申請できても、判断するのは上司や会社だ。本人にとって切実な事情があっても、それが判断材料として扱われるとは限らない。

ここが、副業解禁が進んだと言われる今でも残っている現実だと思う。「国が副業を推進している」「うちの会社は禁止していない」という話と、「実際に自分の申請が通るかどうか」は、まったく別の問題だ。


収入の問題は、承認を待ってくれない

彼が副業をしようとしていた理由は、はっきりしていた。会社の給料だけでは家族を養えなかったからだ。

これは技術力の問題ではない。彼は自分よりも経験年数が長く、技術力も高い人だった。それでも年収が上がらなかった。働いている会社の給与テーブルと評価制度が、そういう構造になっていたという話だ。仕事量は増えていくのに、報酬はついてこない。

収入が足りないという問題は、待ってくれない。家賃も学費も毎月やってくる。「昇給交渉をして半年待つ」「転職活動をして3ヶ月かける」という選択肢は、理屈としては正しくても、目の前の生活費には間に合わない。

だから彼は副業に目を向けた。即効性のある手段として、最も現実的だったからだ。その判断自体は、責められるものではないと思っている。


会社に伝えないまま副業を始めるという選択

結果として、彼は会社に伝えないまま副業を始めた。知り合いから紹介された会社の受託開発を、個人として請け負う形だ。

これを「そうすればいい」と書くつもりはない。無申告の副業は、就業規則違反として懲戒の対象になり得ると一般に言われているし、会社との信頼関係を損なうリスクもある。判断に迷う状況なら、社労士や弁護士といった専門家に相談するのが本来の筋だ。

ただ、こういう選択をせざるを得ない状況が存在するという事実は、書いておきたい。「ルール上は申請できる」「でも承認されない」「それでも収入は足りない」。この三つが重なったとき、残る選択肢はかなり少ない。彼は、そのうちの一つを選んだ。

重要なのは、その選択がリスクを抱えたままの状態だということだ。会社にバレるリスクだけでなく、別のリスクも背負っていた。それが次に起きたことにつながる。


副業先が給料未払いのまま倒産した

副業を続けていた彼のところに、報酬が入ってこなくなった。

副業先からの支払いが遅れ始め、やがて止まった。催促しても状況は変わらず、最終的にその会社は倒産した。未払い分は回収できなかった。

これが、無申告の副業が抱えるもう一つのリスクだ。会社に伝えていないから、トラブルが起きたときに誰にも相談しにくい。社内の人に「副業先が未払いで」とは言えない。報酬の回収に本気で動こうとすれば、副業の存在が表に出る可能性がある。だから、損失を飲み込むしかなくなる。

本業の収入を補うために副業をして、その副業で損失を負った。労働時間だけが増えて、手元には何も残らなかった。


最終的に彼は環境そのものを変えた

最後に彼が選んだのは、本業の会社を辞めることだった。

副業で埋めようとしていた収入の差を、転職によって解消する方向に切り替えた。副業が承認されない、年収が上がらない、仕事量だけ増える。その環境に手を入れずに、副業という外側の手段で補おうとしていたことに、どこかで気づいたのだと思う。

副業は収入を足す手段だが、本業の環境が悪いことへの解決策にはならない。働く時間を増やして収入の不足を埋めている間、環境そのものは何も変わらない。むしろ疲弊して、転職活動をする余力まで削られていく。


この話から考えた3つのこと

彼の話を聞いて、自分なりに整理したことが3つある。

①副業の扱いは、入社前に確認しておく

副業をする可能性があるなら、選考の段階で「副業は可能か」「実際に承認された例があるか」まで聞いておく価値がある。就業規則の文面だけでは、実際の運用はわからない。禁止されていないことと、承認されることは別だ。

②副業で埋められる金額には限界がある

時間を切り売りする副業は、使える時間の上限がそのまま収入の上限になる。本業で8時間働いた後に残る時間で、年収200万円の差を埋めるのは現実的ではない。年収の差が大きいなら、転職という手段の方が効率がいい。

③時間の切り売りではなく、ストック型を選ぶ

受託開発のような労働集約型の副業は、手を止めた瞬間に収入が止まる。そして今回のように、取引先のトラブルで一気にゼロになることもある。一方、ブログやコンテンツ、自分の商品のように、積み上げた資産が収入を生む形なら、時間の制約から少し自由になれる。立ち上がりは遅いが、天井がない。

そして何より、身を置く環境が一番効く。これは自分の2度の転職でも実感したことだ。


よくある疑問への回答

Q. 就業規則に禁止と書かれていなければ、副業しても問題ないのでしょうか?

「禁止されていない」と「自由にできる」は別だ。多くの会社は許可制を取っており、申請して承認を得る必要があると一般に言われている。無申告で始めた場合、就業規則違反として処分対象になる可能性がある。自分の会社の規定を確認し、判断に迷う場合は社労士など専門家に相談するのが確実だ。

Q. 副業を申請して断られたら、どうすればいいですか?

断られた理由を具体的に確認するのが最初のステップだ。「業務時間に影響するから」であれば、稼働時間や業務内容を調整して再申請する余地がある。理由が曖昧で、交渉の余地もないなら、副業ではなく転職で収入を上げる方向に切り替えた方が早い。

Q. 副業をするより転職した方がいいのでしょうか?

収入の不足額が大きい場合は、転職の方が効率的だ。副業で月5万円を稼ぐには相当な時間を使うが、転職で年収が100万円上がれば月8万円以上の差になる。一方、収入を増やすこと以外の目的(スキルの実験、将来の独立準備)があるなら、副業にも固有の価値がある。目的によって使い分けるべきものだ。


まとめ:副業は手段の一つ、環境を変える方が効く

副業を申請して承認されなかった。収入は足りない。会社に伝えずに始めた副業先は、未払いのまま倒産した。最終的に彼は、会社を辞めて環境を変えた。

この話から学べることは、二つある。

一つは、副業を考えるなら「時間を切り売りする形」ではなく「積み上がる形」を選んだ方がいいということ。もう一つは、本業の環境に問題があるなら、副業で補うのではなく環境そのものを変える方が効くということだ。

副業は収入を足す手段として有効だが、本業の構造的な問題を解決してはくれない。収入が上がらない、副業も認められない、仕事量だけ増える。そういう環境にいるなら、まず考えるべきは環境を変えることだと思っている。

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