居酒屋の副店長からITエンジニアに転向して、20年近くが経った。
正直に言うと、良いことだけではなかった。きつい時期もあったし「なぜこの道を選んだのか」と思った瞬間も何度かある。それでも、総合的に振り返ったとき、エンジニアになったことは正解だったと思っている。
この記事では、エンジニアになって良かったこと・悪かったことを正直に書く。華やかな成功談ではなく、20年近く働いてきた上での等身大の感想だ。未経験からエンジニアを目指している人の参考になれば嬉しい。
一番良かったこと:スキルアップに上限がない
エンジニアになって一番良かったと感じているのは、スキルアップの底がないということだ。
居酒屋で働いていた頃、成長の実感が薄かった。接客スキルや管理能力は身についたが、ある程度のレベルに達すると、それ以上伸びている感覚がなかった。毎日同じことを繰り返している感覚があった。
エンジニアになってからは、その感覚が変わった。
技術の世界は常に変化している。新しいプログラミング言語、新しいフレームワーク、新しいアーキテクチャ。学ぼうと思えば学べることが無限にある。20年近く働いてきた今でも「まだ知らないことがある」という感覚が続いている。
これはプレッシャーでもあるが、やりがいでもある。「学び続けることができる」という事実が、仕事へのモチベーションを保つ上で大きな役割を果たしてきた。年齢を重ねても新しいことを学べる。それがエンジニアという仕事の大きな魅力だと思っている。
良かったこと①:年収・待遇が大きく上がった
最も具体的な変化として、年収が上がったことがある。
居酒屋副店長の頃、年収は300万円未満だった。エンジニアとして20年近く働いてきた今、年収は900万円近くになっている。同じ人間が、同じ時代に、これだけの差がついた。
もちろん最初からすぐに上がったわけではない。SES時代は年収の伸びが遅く、お金の不安が常にあった。転職を重ねることで、段階的に上がっていった。ただエンジニアという仕事を選ばなければ、この変化はなかったと思う。
年収が上がることで精神的な余裕が生まれた。嫌な現場や環境に対して「最悪辞めればいい」という選択肢を持てるようになった。お金の余裕は、仕事への向き合い方を変える。
良かったこと②:場所を選ばず働けるようになった
エンジニアになって実感している良さの一つが、働く場所の自由度だ。
居酒屋で働いていた頃、働く場所は完全に固定されていた。店に行かなければ仕事にならない。リモートワークという概念自体がなかった。
エンジニアになってからは、特にここ数年でリモートワークが普及して、働く場所の自由度が大きく上がった。通勤ストレスがなくなったことで、毎日の生活の質が変わった。
フルリモートで働いた経験から「働く場所を選べること」の価値を強く実感した。体力を通勤で消耗しなくなった分、仕事と生活の両方の質が上がった。これは、エンジニアという仕事を選んだからこそ得られたものだ。
良かったこと③:年齢に関係なく市場価値を作れる
エンジニアという仕事は、年齢よりもスキルと経験で評価される部分が大きい。
飲食業では、体力的な限界が年齢とともに見えてきやすい。エンジニアは40代・50代になっても現役で活躍できる仕事だ。もちろん技術のキャッチアップは必要だが、年齢そのものが障壁になりにくい。
転職市場でも、経験とスキルが武器になる。20年のキャリアがあれば、それ自体が市場価値になる。「年だから転職できない」ということが、他の業界より少ない。
これは長く働き続けることを考えたとき、大きな安心感につながっている。
良かったこと④:仕事の選択肢が広がった
ITエンジニアというスキルを持つことで、働き方の選択肢が広がった。
フリーランスという働き方もある。副業としてスキルを活かすこともできる。特定の会社に縛られなくても、自分のスキルで働ける可能性がある。
飲食業では「この店を辞めたら次の店に移るだけ」という選択肢しかなかった。エンジニアになってから「正社員として会社に勤める」以外の選択肢が見えてきた。その可能性が広がっていること自体が、精神的な余裕をくれる。
良いことだけではなかった:正直に言うと教わったことも多かった
エンジニアになって良かったことを書いてきたが、正直に言うと教わったことも多かった。
技術力への自信のなさは、20年経った今でも完全には消えていない。優秀なエンジニアを見るたびに、自分との差を感じる瞬間がある。「自分はこの仕事に向いているのか」と思った時期は一度だけではない。
炎上案件、適応障害による休職、管理職としての消耗。きつい経験も確かにあった。「エンジニアになれば人生がバラ色になる」というわけではなかった。
ただ、それらの経験を通じて学んだことがある。消耗しない働き方の大切さ、自分の限界を認識することの重要性、無理をし続けることのリスク。これらは、エンジニアとして働く中で身をもって学んだことだ。
「良いことだけでなく教わったことも多かった」という感想が正直なところだ。でも、それを含めてエンジニアという仕事を選んで良かったと思っている。
未経験からエンジニアを目指す人へ
20年近いキャリアを踏まえて、同じ状況の人に伝えたいことがある。
完璧な準備を待たなくていい。自分も「スキルが足りない」「年齢的に遅い」という不安を持ちながら動いた。不安は動いてみないと解消しない。まず動くことが最初の一歩だ。
最初の職場が全てではない。SESからスタートして良かったと思っている。多様な現場経験を積んで、転職を重ねてキャリアを作ることができた。最初の会社が理想の環境でなくても、それがキャリアの終わりではない。
技術力だけが武器ではない。自分自身、技術力は平均以下のままここまで来た。コミュニケーション能力、段取り力、報告・連絡・相談の丁寧さ。技術以外の部分で評価される機会が、思った以上に多い。
よくある疑問への回答
Q. ITエンジニアになって本当に年収は上がりますか?
上がる可能性は十分にある。ただし「エンジニアになれば自動的に上がる」わけではない。最初のSES時代は年収がなかなか上がらなかった。転職を戦略的に重ねることで、段階的に上がった。年収アップには「環境を選ぶ」という動きが必要だ。
Q. 30代・未経験でもエンジニアになれますか?
なれる。自分自身が30代前半での転向だ。ただし年齢が上がるほど未経験での採用は難しくなる傾向がある。「いつかやろう」ではなく、今すぐ情報収集を始めることをすすめる。
Q. エンジニアに向いていない人はどんな人ですか?
「わからないことを調べ続けることが苦痛」な人は、向いていないかもしれない。逆に、粘り強く調べ続けられる人は向いている。プログラミングのセンスより「わからないことに向き合い続けられるか」の方が、長く続けられるかどうかに影響する。
まとめ:エンジニアという選択は、総合的に正解だった
居酒屋副店長から20年近くエンジニアを続けてきた。良いことだけではなかったし、きつい時期もたくさんあった。
それでも、エンジニアになったことは正解だったと思っている。スキルアップの上限がないこと、年収と待遇が上がったこと、場所を選ばず働けるようになったこと、年齢に関係なく市場価値を作れること。これらは、他の仕事では得られなかったものだ。
「このままでいいのか」という不安を抱えて動いた20代後半の自分に言えるとしたら、「動いて正解だった」という一言だ。


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