20代後半、居酒屋の副店長をしていた。
ITとは完全に無縁の世界だ。毎日ホールとキッチンを行き来して、スタッフのシフトを組んで、売上の管理をして。それなりに充実していた部分もあった。ただ、年収は300万円に届かなかった。
このまま続けて、10年後どうなるのか。その問いが頭から離れなくなったのが、エンジニアを目指すきっかけだった。
この記事では、飲食業から未経験でITエンジニアへの転職を決意した当時の状況と、その判断の背景を正直に書く。
居酒屋副店長としての日々:体力と時間を使い続けた20代
副店長という肩書きはあったが、実態は現場のなんでも屋だった。
開店準備から閉店後の片付けまで、スタッフが足りなければ自分が入る。クレーム対応、発注管理、売上報告。忙しいことは確かだった。仕事自体が嫌いだったわけではない。お客さんに喜んでもらえる瞬間はやりがいもあった。
ただ、続けていくイメージが持てなかった。
体力勝負の仕事だ。若いうちはいい。でも40代、50代になってこの仕事を続けられるのか。そういう未来を想像したとき、はっきりとした絵が浮かばなかった。
年収も、働く時間の割に上がらなかった。残業は当たり前。休日出勤もある。それだけ時間を使って、手元に残るお金が少ない。「このまま頑張っても、生活が大きく変わることはないかもしれない」という感覚が、じわじわと積み重なっていった。
30代目前に感じた将来への不安
20代後半というタイミングが、不安を加速させた。
「30代になる前に何か変えないといけない」という感覚があった。30代になってから未経験で新しいことを始めるのは難しいという、根拠のない思い込みもあった。今から動かないと手遅れになる、という焦りだ。
お金の不安も具体的だった。年収300万円未満では、将来の生活設計が立てにくい。結婚、住居、老後。考えれば考えるほど、今の収入では心もとなかった。
飲食業の将来性にも不安を感じていた。体力的な限界が年齢とともに来ること、年収が上がりにくい業界構造であること。「このまま飲食業を続けることのリスク」が、じわじわと見えてきた。
「このままでいいわけがない」という気持ちだけは強くあった。ただ、何をどう変えればいいかは、まったくわからなかった。
なぜ飲食業からITエンジニアを選んだのか
いくつかの選択肢を考えた。資格を取って別の職種を目指す。営業職に転職する。独立して飲食店を開く。
その中でITエンジニアという選択肢が浮かんだのは、いくつかの理由からだった。
需要が高い。デジタル化の波でエンジニアの需要は増えており、未経験でも入れる求人が一定数ある。
体力に依存しない。飲食業と違って、年齢を重ねても続けやすい仕事だ。40代、50代になっても現役でいられる可能性がある。
年収が上がる可能性がある。スキルと経験次第で、年収を大きく上げられる。飲食業では構造的に上がりにくかった部分が、ITでは変えられる可能性があった。
場所を選ばず働けそう。リモートワークの可能性もあり、飲食業のように現場への拘束がない働き方も見えた。
ただ、プログラミングをやったことも、ITの知識もまったくなかった。「自分にできるのか」という不安は大きかった。それでも、今の状況を変えるために動かないといけないという気持ちの方が、不安より少しだけ大きかった。
当時の自分を振り返って
今振り返ると、あの頃の自分はかなり追い詰められていたと思う。
将来への不安、収入への不満、このままでいいのかという焦り。それが重なって、「変えなければ」という気持ちが生まれた。決して前向きな動機だけではなかった。現状から逃げたいという気持ちも正直あった。
ただ、それでも動いたことは正解だったと思っている。
動機がカッコよくなくてもいい。追い詰められてから動いてもいい。大切なのは、「このままではいけない」と気づいたときに、実際に動けるかどうかだ。
居酒屋の副店長から、20年近くエンジニアとして働き続けることになるとは、あの頃の自分には想像もできなかった。結果として、年収は300万円未満から900万円近くになった。
よくある疑問への回答
Q. 飲食業などのサービス業からITエンジニアへの転職は現実的ですか?
現実的だ。自分自身が飲食業からエンジニアに転向して、20年近くやれている。ただし、ある程度の学習期間と、最初の就職先として間口が広いSESや小規模IT企業を選ぶ現実的な戦略が必要だ。「未経験でもできるか」より「どうすれば最初の一歩を踏み出せるか」を考える方が建設的だ。
Q. 30代での未経験転職は遅すぎますか?
遅くはない。自分は30代前半での転向だった。ただし年齢が上がるほど未経験での採用は難しくなる傾向があるため、動くなら早い方がいい。「いつかやろう」ではなく、今すぐ情報収集を始めることをすすめる。
Q. ITの知識がゼロでもエンジニアになれますか?
なれる。重要なのは「学び続ける姿勢があるか」だ。まずProgateやUdemyで独学を試してみて、自分に合っているかを確かめてから本格的に動くことをすすめる。今の時代はAIツールを使えば疑問もすぐに解決できるので、独学のハードルは以前より下がっている。
まとめ:どんな出発点でも、動いた先に道はある
飲食業の居酒屋副店長が、未経験からITエンジニアを目指した。スキルも知識も、特別な才能も何もなかった。あったのは「このままではいけない」という気持ちだけだった。
それで十分だったと、今は思っている。出発点は関係ない。動いた先に道はある。


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