20年近くエンジニアとして働いてきた中で、「こんな人になりたい」と思えた人に、何人か出会った。
特定の一人ではなく、複数の現場で出会った人たちだ。共通していたのは、技術力が高いだけではなく、人柄も際立っていたということだ。「技術力のある人」は現場にたくさんいる。でも「技術力があって、かつ人柄も良い人」は、思っているより少ない。
そういう人たちから受けた影響が、自分のエンジニアとしての理想像を形作ってきた。この記事では、具体的にどんな人たちだったか、何を感じたかを書く。
技術力と人柄を両立している人の希少さ
エンジニアの現場には、技術力が高い人がいる。
コードを書くスピードが速い。難しい問題をすぐに解決する。最新の技術にも詳しい。そういう人は、確かにすごいと思う。
でも、技術力が高い人の中に、「一緒に働いていて気持ちがいい」と感じる人は、意外と少ない。
技術力が高いゆえに、自分より技術力が低い人を見下すような態度をとる人もいる。「なぜこんなことがわからないのか」という雰囲気を出す人もいる。質問に対して素っ気ない返答をする人もいる。
技術力は高いが、一緒に働くのがストレスになる人。そういう人も、現場では珍しくない。
だからこそ、「技術力が高くて、かつ人柄も良い」という人に出会ったとき、その希少さを実感する。「こんな人になりたい」という感情が、自然と湧いてくる。
印象に残っている「あのおじさん」たち
複数の現場で、印象に残った先輩エンジニアたちがいた。
一人目は、SES時代の現場で出会った50代のエンジニアだった。技術力は明らかに高く、難しい問題をサラッと解決してしまう。でも、自分のような経験の浅いエンジニアからの質問にも、嫌な顔一つせず丁寧に答えてくれた。
「こういう質問をしたら馬鹿にされるかも」という不安が、その人の前ではなかった。わからないことを素直に聞ける雰囲気を、自然と作り出してくれていた。
技術的な問題に直面したとき、「こういう観点で考えてみたらどう?」という示し方をしてくれた。答えをそのまま教えるのではなく、考え方を伝えることで、こちらが自分で解決できるよう導いてくれた。その人のおかげで、問題解決のアプローチが変わった。
二人目は、SIer時代の現場で出会った40代のベテランエンジニアだった。技術力が高いのはもちろんだが、チームメンバーへの気配りが際立っていた。
詰まっているメンバーに気づくのが早かった。「大丈夫?」と声をかけて、さりげなくサポートする。プロジェクトが厳しい状況になったとき、チームの雰囲気が悪くならないように、意識的に場を和ませていた。
「この人がいるから、このチームはうまく回っている」という存在感があった。技術力だけでなく、チームに対する影響力という意味での価値が、明確にあった。
彼らに共通していたこと
複数の現場で「こんな人になりたい」と思えた人たちに、共通していることがあった。
技術への謙虚さだ。技術力が高いにもかかわらず、「自分もまだ知らないことがある」という姿勢を持ち続けていた。新しい技術や知識に対して、素直に「それは知らなかった、教えてくれてありがとう」と言える人だった。
技術力が高い人の中には、「自分の方が知っている」という態度が出る人もいる。でも、本当に実力のある人は、むしろ謙虚なことが多い。自分がどれだけ知らないかを知っているから、学ぶ姿勢が自然と出てくるのかもしれない。
後輩への接し方も共通していた。経験の浅いエンジニアに対して、見下すような態度をとらない。質問には丁寧に答える。失敗したときも責めずに、「次どうするか」を一緒に考える。
「この人に聞いてみよう」と思える雰囲気を作れる人が、現場を良い空気にする。そういう人の存在が、チーム全体の生産性に影響することを、複数の現場で実感した。
自分のペースを持っていることも印象的だった。周囲に流されず、自分の仕事のスタイルが確立されていた。残業が当たり前の雰囲気の中でも、必要なときは残るが、無駄な残業はしない。そういうスタンスを、若手に対しても押しつけず、自分のやり方として持っていた。
「技術力だけでは足りない」と気づいた
そういう人たちに出会うことで、「技術力だけが評価される要素ではない」ということを実感した。
自分自身、技術力は平均以下のままここまで来た。「技術力が低いから、エンジニアとしての価値が低い」という思い込みが、キャリアの初期には強くあった。
でも、「こんなエンジニアになりたい」と思えた人たちを見ていると、技術力は重要な要素の一つではあるが、それだけではないということがわかった。
人柄、チームへの貢献、後輩への接し方、謙虚さ、自分のペース。これらが組み合わさって、「この人と一緒に働きたい」「この人から学びたい」という評価につながる。
技術力で周囲を圧倒できなくても、人柄と仕事への姿勢で貢献できる部分がある。その気づきが、自分のキャリアの方向性を決める上で大きな影響を与えた。
自分が目指したエンジニア像
「こんな人になりたい」という感情を持ちながら、自分なりのエンジニア像を考えてきた。
技術力で一番になれなくても、一緒に働いていて気持ちがいいと思ってもらえるエンジニアでありたい。チームの中で、誰かが詰まっていたら気づいて声をかけられるエンジニアでありたい。若い人からの質問に、嫌な顔をせず丁寧に答えられるエンジニアでありたい。
完全にその理想に達しているかというと、自信はない。でも、「こうなりたい」という方向性があることが、日々の仕事への向き合い方を変えてくれている。
「なりたくないエンジニア」も見てきた
「こんなエンジニアになりたい」と思えた人がいる一方で、「こうはなりたくない」と思えた人も見てきた。
技術力は高いが、自分より下の人間を馬鹿にするような態度をとる人。成果を独占して、チームへの貢献を大切にしない人。新しい技術や考え方を拒否して、自分のやり方を押しつける人。
そういう人たちも、自分のエンジニア像を形作る上で影響を与えてくれた。「反面教師」という形で、「こうはなりたくない」という明確な基準を持てた。
理想の人物像だけでなく、「なりたくない人物像」も明確に持つことで、日々の仕事での判断基準が具体的になる。
よくある疑問への回答
Q. 技術力が低くても、人柄でカバーできますか?
完全にカバーできるとは言えないが、技術力が平均程度でも人柄と仕事への姿勢で評価される機会は確実にある。自分自身がその証明だと思っている。ただ、技術力を上げる努力を怠っていいということではない。技術力を上げながら、人柄も大切にするという両方が理想だ。
Q. 良い先輩・メンターに出会うにはどうすればいいですか?
意識的に「良い人がいる環境」に身を置くことが大切だ。転職活動のとき、面接で「どんな人が活躍しているか」「チームの雰囲気はどうか」を確認する。良い人材が集まっている会社は、採用基準も高く、文化として良い人間関係が育ちやすい。
Q. 自分が後輩を持ったとき、良い先輩になるにはどうすればいいですか?
「質問しやすい雰囲気を作ること」が一番大切だと思っている。答えを教えることより、「聞いていい」という安心感を持ってもらうことが先だ。自分がかつて「この人に聞きやすい」と感じた先輩の行動を思い出して、それを実践することから始めるといい。
まとめ:技術力と人柄の両立が、理想のエンジニア像
複数の現場で出会った「こんなエンジニアになりたい」と思えた人たちは、技術力が高いだけでなく、人柄も際立っていた。
謙虚さ、後輩への接し方、チームへの貢献、自分のペースを持つこと。これらが組み合わさって、「一緒に働きたい」「この人から学びたい」という評価につながっていた。
技術力で一番になれなくても、人柄と仕事への姿勢で貢献できる部分がある。それが、自分のエンジニアとしての生存戦略の一つでもあった。

コメント