SES(客先常駐)で年収が上がらない理由と転職すべきタイミング|中小SESの構造的な限界

3〜5年目の伸び悩み

SESに入って4〜5年が経った頃、あることに気づいた。

頑張っても、経験を積んでも、年収がほとんど上がらない。現場での評価は悪くない。スキルも少しずつ身についている。なのに、給料の伸びが明らかに鈍い。

これは自分の努力が足りないのではなく、SESという構造の問題だと気づいたのは、もう少し後のことだった。

この記事では、SES・客先常駐エンジニアの年収が上がりにくい構造的な理由と、転職すべきタイミングについて、6年以上SESで働いた経験をもとに書く。


SESで4〜5年働いて感じた「おかしさ」

最初の数年は、現場についていくのに必死だった。技術的なキャッチアップ、初めての業界、一人で対応しなければならない状況。余裕がなかったから、年収のことをじっくり考える暇もなかった。

4〜5年目になって少し落ち着いた頃、ふと気になって自分の年収の推移を振り返った。

入社時からほとんど変わっていなかった。

現場での経験は確実に積み上がっている。対応できる業務の幅も広がった。それなのに、年収は微増どころかほぼ横ばいだった。「なぜだろう」と思って、SESのビジネス構造を改めて調べてみた。


SESで年収が上がらない構造的な理由

SESの収益構造はシンプルだ。エンジニアをクライアントに常駐させて、その稼働に対して単価をもらう。エンジニアの年収は、その単価から会社のマージンを引いた分で決まる。

つまり、年収を上げるには「単価を上げる」か「マージンを下げる」しかない。

単価を上げることが難しい理由

単価を上げるには、希少性の高いスキルか、長年の実績が必要だ。中小SES企業の場合、扱う案件の単価には上限がある。大手企業や高単価案件を取ってくる営業力がない会社では、どれだけ個人のスキルが上がっても、案件の単価自体が上がらない。

また、SESでは「良い現場に入れるかどうか」は会社の営業力に依存する。自分がスキルアップしても、会社が高単価案件を取れなければ意味がない。

マージンの交渉余地がない理由

会社の取り分(マージン)は固定されていることが多く、個人が交渉できる余地はほとんどない。一般的にSESのマージン率は20〜40%と言われているが、これを下げてもらうことは現実的に難しい。

結果として、中小SESに所属している限り、年収の上限が構造的に決まってしまう。これは努力や実力の問題ではなく、「いる場所」の問題だ。


上司を見て確信した「年収の天井」

決定的だったのは、当時の上司の年収を知ったときだ。

10年以上のキャリアがある上司と、自分の年収がほとんど変わらなかった。自分より明らかに経験も技術力もある人が、その程度の年収で止まっている。

「この会社にいる限り、10年後もこの年収帯なんだ」と直感した。

努力や成長の問題じゃない。構造の問題だ。どれだけ頑張っても、その会社・その環境にいる限り、到達できる年収に天井がある。その天井が、思ったより低いところにあった。


SESのキャリアアップに限界を感じた3つのポイント

SESで6年以上働いた経験から、キャリアアップの限界を感じた具体的なポイントを整理する。

①年収の上限が構造的に決まっている

上述の通り、中小SESでは個人のスキルと年収が比例しない。どれだけ成長しても、会社が取れる案件の質・量に縛られる。転職市場での市場価値は上がっているのに、今の会社ではそれが反映されない、という状況に陥りやすい。

②上流工程に関われない

SES・客先常駐では、下流工程(実装・テスト)の案件が中心になりやすい。要件定義や設計などの上流工程に関わりたいと思っても、それを任せてもらえる案件に入れるかどうかは会社の営業力次第だ。

スキルシートに「上流工程経験あり」と書けるかどうかで、転職市場での評価は大きく変わる。この差が、SESに長くいると開きにくい部分だ。

③キャリアを自分で設計しにくい

どの案件に入るかは会社が決める。「この技術を習得したい」「この業界の経験を積みたい」という希望を伝えても、実際には会社の都合で動かされることが多い。

自分でキャリアを設計する感覚が持ちにくく、気づいたら「この会社が用意した案件をこなすだけ」になりやすい。


SESから転職すべきタイミング

「限界を感じたら動く」というのは正しいが、具体的にどのタイミングで動けばいいのかを書く。

自分の場合、限界を感じたのは4〜5年目だったが、実際に動いたのは6年以上経ってからだった。もっと早く動けばよかったというのが、正直な後悔だ。

転職を考え始めるべきサイン

次のような状態が続いているなら、転職を真剣に考えるタイミングだ。

入社から2〜3年が経っても年収がほとんど変わっていない場合、スキルシートに書ける内容が1〜2年増えていない場合、同年代で転職した同僚・同期との年収差が広がってきた場合、上司を見て「10年後の自分がここにいる」という気持ちになった場合、これらは環境を変えるサインだと思っていい。

転職の適切なタイミング

SESから転職するなら、経験3〜5年が最も動きやすいタイミングだ。実務経験がある程度積み上がっており、かつ年齢的にも転職市場で評価されやすい。

「もう少しスキルが上がってから」という先送りは危険だ。自分自身、6年以上先送りした結果、転職できたものの機会損失が大きかった。完璧な準備を待つより、「転職活動だけでも始めてみる」という一歩の方がずっと価値がある。


SESから転職する際の具体的な手順

転職活動を始めるための具体的なステップを書く。

ステップ1:自分の市場価値を把握する

まずキャリア経歴書を更新して、スカウトサービスに登録する。転職するかどうかに関わらず、「今の自分はどのくらいの価値があるか」を知ることから始める。スカウトが届いた求人の内容や年収を見るだけで、市場価値が把握できる。

ステップ2:複数の転職エージェントに登録する

総合型(リクルートエージェント、doda)とIT特化型(Green、Findy)を1社ずつ使うことで、求人の幅が広がる。エージェントに「今の状況でどんな選択肢があるか」を相談するだけでも、視野が広がる。

ステップ3:転職先の選び方を決める

SESからのステップアップ先として多いのはSIer、自社開発企業、上流工程重視のSES大手などだ。「年収を上げたい」「上流工程を経験したい」「キャリアを自分で設計したい」という目的によって、最適な転職先が変わる。


よくある疑問への回答

Q. SESから転職するのにスキルが足りるか不安です

SESで3〜5年の実務経験があれば、転職市場での評価は思っているより高いことが多い。自分のスキルを過小評価しているケースが多い。まずスカウトサービスに登録して、どんな求人が届くかを確認することをすすめる。

Q. SESは転職の踏み台として使えますか?

使える。未経験からエンジニアになった場合、最初にSESで実務経験を積んで、その後転職でステップアップするルートは現実的だ。ただし「踏み台」として使うなら、在籍中から転職を意識して、スキルシートに書ける経験を意図的に積むことが大切だ。

Q. 大手SESなら年収が上がりますか?

大手SESは中小SESより単価が高い案件を扱いやすく、年収の上限が高い傾向がある。ただし大手でも「SESである」という構造は同じで、上流工程に関わりにくい・キャリアを自分で設計しにくいという課題は残る。


まとめ:SESの年収が上がらないのは、構造の問題

中小SESのキャリアアップに限界があるのは、個人の能力の問題ではない。構造の問題だ。

年収が上がりにくい、上流工程に関われない、キャリアを自分で設計しにくい。これらはSESという仕組み上、避けにくい課題だ。

限界を感じたなら、それは環境を変えるサインだ。「もう少し経験を積んでから」という先送りは、機会損失につながる。気づいた時点で転職活動を始めることが、キャリアを変える最短ルートだと、自分の経験から強く思っている。

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