管理職として仕事をするようになってから、コードを書く機会がほとんどなくなっていた。
会議、資料作成、進捗管理、ステークホルダーとの調整。毎日そういった仕事に追われて、「エンジニアとして技術に向き合う時間」が気づけばなくなっていた。「自分はもう開発の現場には戻れないのかもしれない」という気持ちが、どこかにあった。
そんな時期に、別のプロジェクトでリードエンジニアとして開発に関わる機会があった。久しぶりにガッツリとコードを書いた。終わってみて思ったのは、「思いのほか楽しかった」ということだ。
管理職になって技術から離れていく不安
PM・PLとして仕事をするようになってから、自分のポジションは「現場を動かす人」になっていた。
チームメンバーが技術的な問題で詰まっていれば解決の方向性を示す。クライアントからの要望を整理して実装可能な仕様に落とし込む。スケジュールと品質のバランスを取りながらプロジェクトを進める。そういった仕事が中心になっていた。
技術的な判断を求められる場面はあった。でも自分でコードを書いて、動くものを作るという機会は、めっきり減っていた。
その状況に複雑な気持ちがあった。管理職として評価されていることへの充実感と、「技術から離れていく自分」への不安が、両方あった。「エンジニアなのに、コードを書かない日が続いている」という感覚が、じわじわと気になっていた。
コードレビューをする機会はあったが「レビューする側」と「書く側」では、技術への関わり方が違う。レビューは評価することで、書くことは創ることだ。その「創る」という感覚が、長い間なかった。
管理職になってコードを書かなくなると技術は錆びるのか。その不安は、多くのエンジニアが感じていることだと思う。
久しぶりに開発現場に戻ったきっかけ
別のプロジェクトで、リードエンジニアとして開発に参画する機会があった。
管理業務が中心の立場から、久しぶりに「自分でコードを書く」役割に戻ることになった。最初は不安だった。「しばらく開発から離れていたから、今の技術についていけるか」「チームに迷惑をかけないか」という気持ちがあった。
特に技術の進化が速いこの業界では、少し離れているだけで「浦島太郎」になりやすい。管理職として過ごした数年間で、自分の技術力が陳腐化していないか、正直わからなかった。
ただ「失敗してもいいや、やってみよう」という感覚で飛び込んでみた。うまくいかなかったとしても、やってみる価値がある。そう思って関わることにした。
久しぶりの開発で感じたこと:技術は意外と残っていた
実際に開発に関わってみると、思っていたより自分のスキルは残っていた。
技術的な細部は変わっていた部分もあった。新しいツールやフレームワークに慣れるまで時間はかかった。でも「問題をどう分解するか」「どういうアプローチで解決するか」という根本的な考え方は、衰えていなかった。
コードを書きながら、気づいたことがある。
「あ、これが楽しいんだった」という感覚だ。
問題を定義して、解決策を考えて、コードに落とし込んで、動いたときの達成感。その一連のプロセスが、久しぶりに体の中に戻ってきた感じがした。管理職として会議や資料作成に追われている時期には感じられなかった、「創る」という行為の楽しさだ。
チームと一緒にコードについて議論することも新鮮だった。「ここはこう実装した方がいい」「この部分はパフォーマンスに影響するかもしれない」。技術的な会話のテンポと熱量が、管理業務の会議とは全然違う。久しぶりにその空気の中にいると「自分はやっぱりエンジニアだ」という感覚が戻ってきた。
技術の楽しさを再認識して気づいた3つのこと
久しぶりの開発を通じて、いくつかのことを再認識した。
①技術は使わなければ衰えるが、完全にはなくならない
数年間コードから離れていても、基礎的な考え方や問題解決のアプローチは残っていた。積み上げてきたものは思っているより消えにくい。「もう戻れない」という気持ちは杞憂だったかもしれない。
これは「全く衰えない」ということではない。確かに細部の知識は錆びついていた。ただ根本的な「エンジニアとしての思考回路」は生きていた。技術との接点を完全に失わない程度の維持があれば、戻ることはできる。
②管理職と技術職は二択ではない
「マネジメントに進んだから、技術はもう関係ない」と思っていた部分があった。でも実際には技術を理解した上でのマネジメントは、技術を知らないマネジメントより価値が高い。「技術がわかるマネージャー」は市場でも評価される。
③「楽しい」という感覚は重要な判断基準になる
管理業務に面白みを感じなくなっていた時期に、久しぶりの開発で「楽しい」と感じた。この感覚の差が、自分がどんな働き方をしたいかを考えるヒントになった。
40代で技術に向き合い続けることの価値
40代のエンジニアが技術に向き合い続けることには、独自の価値がある。
20年近くの経験から積み上げた「判断力」と「視野の広さ」を持ちながら、技術にも向き合える。若いエンジニアにはない経験値と、現役としての技術力を組み合わせることができる。
「40代になったら技術は卒業」ではなく「40代だからこそできる技術との向き合い方がある」という視点でキャリアを考えると、選択肢が広がる。
管理職をしながら技術との接点を意識的に作り続けること。週に少しでもコードを書く、技術的な議論に積極的に参加する、新しい技術を触ってみる機会を作る。こういった小さな積み重ねが、技術力の維持につながる。
管理職と開発現場の両立を考える人へのアドバイス
同じように「管理職になって技術から離れていく不安」を感じているエンジニアに向けて、実体験から伝えたいことがある。
技術との接点を完全に失わない工夫を意識的にする。コードレビューに積極的に関わる、技術的な判断が必要な場面で率先して考える。小さくてもいいので、技術に触れる習慣を作ることが大切だ。
「いつかまた開発に戻りたい」なら、早めに試してみる。時間が経つほど「今さら」という感覚が強くなる。機会があれば積極的に開発に関わってみることをすすめる。
技術力に過度な不安を感じなくていい。自分の経験からは「基礎的な思考回路は残る」という手応えがあった。完璧でなくてもいい。動くことで感覚は戻ってくる。
よくある疑問への回答
Q. 管理職になったら技術力は完全に衰えますか?
完全には衰えない。使わなければ細部の知識は錆びつくが、基礎的な考え方や問題解決のアプローチは残る。ただし「全く衰えない」わけではないので、意識的に技術との接点を作ることが大切だ。定期的にコードを書く機会を作るだけで、維持できる部分が大きい。
Q. 管理職から開発現場に戻ることはできますか?
できる。「一度管理職になったら現場には戻れない」わけではない。キャリアの転換は可能で、実際に管理職からプレイヤーに戻るエンジニアも多い。ただし年数が経つほど技術のキャッチアップに時間がかかるため、定期的に技術に触れておくことが、戻りやすさに影響する。
Q. 管理職と技術職、40代ではどちらが市場価値が高いですか?
「技術がわかるマネージャー」が最も市場価値が高い傾向がある。純粋なマネージャーより、技術的な判断もできる人材の方が需要が高い。40代では技術力だけで若い世代と競うより、マネジメント経験と技術力を組み合わせたポジションを目指す方が現実的だ。
まとめ:技術の楽しさは、離れても消えない
管理職として技術から離れていた時期を経て、久しぶりにガッツリ開発に関わった。
「思いのほか楽しくやれた」という経験が、技術の楽しさを再認識させてくれた。コードを書くことの達成感、技術的な議論の熱量、「創る」という行為の喜び。管理業務の中では感じられなかったものが、久しぶりに戻ってきた。
技術との接点を完全に失わないこと。それが40代エンジニアとして長く働き続けるための、自分なりの答えになっている。


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